ある症状でこられた患者さん。
どうも顔色がさえない。
「あれ、なんとなく 調子が悪いのかな」

診察時に それをお伝えして さっそく該当する科を受診され、検査を受けられると
すぐに治療を要する病気がみつかった。受診された症状とは 直接 関連性はない病気であった。
早期発見に対して 御礼をいただいた。

病気自体が引き起こす症状があれば、疑う病気の検査を行うことはあっても、訴えや症状がなければ、
そのまま様子を見ることになる場合も 少なからずある。特に 短時間で多くの方を診察する外来診療では
どうしてもその傾向がある。来院される方の中には、自分の調子が悪いところだけを診ろ という場合もある。

「なんとなく 顔色がよくないなあ」
「なんとなく 元気がないなあ」
「なんとなく 声に はりがないなあ」

ご本人、ご家族でも 日々すごしていると気づかないことも多い。
IoT、AI 全盛の時代。スマホも施設入館も審査も、顔認証が当たり前の時代。
はたして この「なんとなく」の違いが、先端機器に識別できるのだろうか…

今の時代にあって、私たち医療者の存在意義があるとすれば、その一つが
この「なんとなく」に気づくこと であるように思う。その点は、動物たちの方が ひとが失いかけている 気配を察知する力を持ち合わせているように感じる。

病気は 症状がある箇所、検査で異常がある部位だけを見ていては わからない。
機器ではわからないことにも気づける、なんとなく力(りょく)が必要だと思います。

 

きたにし耳鼻咽喉科