「医療面接」ということばをお聞きになったことがあるでしょうか。

診察の前に、まず患者さんからお話をお聞きすることを、「問診」と呼ぶのはご存じの方も多いでしょう。

最近では、この「問診」と「医療面接」というのを、使い分けるようです。
よく書かれている定義(?)としては、

医療面接は医師と患者が良好な人間関係を築くことが目的。医師と患者は対等な関係でコミュニケーションする。

問診は医師が欲しい情報を得るのが目的で、病歴聴取と呼ぶ。医師主体、医師からの質問が中心。

らしいです。

ことばの定義を見ると、医療面接は、大切だなあ、すばらしいなあ、と思いますね。
ただ、よく読んでみると、私たち医師は、今まで ”患者さんと良好な人間関係を築かず” に、”患者さんと対等な関係でコミュニケーションをとってこなかった” のかな、と。

昔ながらの医師像として、症状だけを聞いて、診断や治療のことは説明もせず、とりあえず患者は医者のいうことを聞いていればいいんだ、という時代があったとは思います。

逆に、最近は、それ以前に、人とコミュニケーションがとれない医師が増えているように思います。ありきたりな推測かもわかりませんが、家庭ゲーム機・インターネット・携帯電話などの普及による孤立化や、少子化・核家族化により、他人と関わらなくても生きていける社会になりました。

そんな時代背景を受けて、このように、あえて「医療面接」という形式を学ばないと、患者さんと会話していけないのかなと、複雑な思いを感じてしまいました。

これまで、私自身は、問診と呼ばれる時代に育ちましたが、決して医療情報だけを得るのが目的に会話したことはありませんでした。やはり患者さんにあいさつをすることから始まり、こちらの考え方、気持ちもお話し、何を考えて検査をして、何の目的で治療する・薬を出すのか、ということを問診と思っていました。

医療に限らず、人と人との関係が希薄なっている時代ですが、せめて病気になって、自分のからだ、場合によっては命をあずけるかもしれない医師側と患者側とは、いい関係が築ければと、思いますね。

きたにし耳鼻咽喉科