(きた日誌) ポリファーマシー、ポリサプリ、ポリ漢方
本年の診察が始まりました。今年も、不調でお困りの方が 一歩でも前に進める手助けができるような診察を心がけてまいります。
まずは、新年早々 令和6年能登半島地震、日航機衝突事故ほか 多くの人命が失われたことに心を傷めています。
日々色々な事件・事後・災害・疾病で亡くなられる方がある中、決して死者数や災害・事故の規模だけで気持ちが変わるわけではありませんが、あらためて 亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、災害や事件・事故では、その後の関連死や関連症状も問題となります。さらに、報に接した方々にも、強い心的ストレスがかかる場合もあります。一日でも早く、日常が戻ることを願い、協力していければと思います。
日々の診察では、色々なケースのご相談をお受けします。
タイトルにある「ポリファーマシー」ということばをご存じでしょうか?超高齢社会を迎えている日本では、いつも問題になり、厚労省などからも、特に高齢者医薬品適正使用指針なども発出されています。以下、その指針内に記載されている内容ですが、
『 高齢者の薬物有害事象増加には、多くの疾患上、機能上、そして社会的な要因が関わるが、薬物動態/薬力学の加齢変化と多剤服用が二大要因である。多剤服用の中でも害をなすものを特にポリファーマシーと呼び、本指針でも両者を使い分けた。ポリファーマシーは、単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態である。』
と説明されています。来院される患者様のお話をお聞きしていると、ほんとうに多くの薬を飲まれているケースをみかけます。治療に必要なお薬が増えること自体は、避けられないことですが、色々なリスクが増えることを考えると、処方する医師側の問題でもあります。
さらに、当院では、食養生や栄養指導などを行っています。実際に、多くの病院を受診され、多くの薬での治療を受けたが軽快しない症状が、食生活の見直しや適切なサプリメントの服用で、劇的に改善することを経験します。他の施設でも、サプリメントを使った栄養状態の改善法は、かなり普及していきています。
その一方で、自由診療を中心とするクリニックでは、あれも必要、これも必要とばかりに、多くのサプリメントをすすめ、来院される方の中には、「10種類をこえるサプリメントを飲んでいます」「月に5万~10万円 サプリメント代がかかります」というケースも見かけています。はたして、10種類のサプリメントを使って得られる健康ってあるの?と疑問を持ちました。
これはまさに ポリサプリ(メンテーション)と言えるでしょう。
また漢方薬も、健康保険により処方が可能であり、私も漢方薬を処方することもしばしばです。ただし、ここでも ポリ漢方薬のケースがあります。症状改善や体質改善として、複数の漢方薬を処方することはあるのですが、実際に来院された方の中には、~専門外来、漢方専門外来などを受診され、3種類 場合によっては 4種類の漢方薬が処方されていることもありました。体調はよくなるどころか、かえって調子を崩しておられました。ご存じのように、名前が違う漢方薬にも、同種の生薬が含まれていますので、注意をしないと特定の生薬の量が非常に多くなっていることがあります。
砂糖を入れ 塩を入れ みりんを入れ しょうゆを入れ スパイスを入れ ドレッシングをかけ…
こういう料理が美味しいとは思えませんね。
調味料はあくまでも 素材の味をひきたたせ うま味をひきたたせるもの。大切なのは 元の素材であり 食材。
素材とは 取りも直さず 私たちのからだであり こころ。いくら この薬 あのサプリ その漢方薬 を使ってみても、生活習慣が乱れ こころが調っていなければ 不調から脱出することは難しいでしょう。
インド・アーユルヴェーダの教えには
「汚れた布は 一度洗わないと きれいに染まらない」
という考え方があります。ただただ 足すだけではなく まずは真っ白な布になる きれいなからだ こころになる
それが 健康への第一歩 だと感じています。