新型コロナウィルス感染の報道も減り、いわゆる「コロナ前」に戻ったような印象があります。
ただ、外来診療では、経過やご希望に応じて検査を行うと、依然として 新型コロナ陽性のケースが続いています。

さらに、新型コロナウィルス罹患後の症状でお困りの方の受診も続いています。症状が長期間続くため、数年にわたって診察させてもらっている方もおられます。特に、罹患後の倦怠感、ブレインフォグなどで休職を余儀なくされたり、学生さんでは登校やクラブ活動がまったくできなくなったり、日常生活 さらには 人生設計までもを 変えざるを得ないケースも目の当たりにしています。

大阪府でも
「コロナ罹患後症状に悩む方の診療をしている医療機関一覧」2024年4月現在)が掲示されていますが、まだまだ対処法、治療法が確立されていない現状では、受診はしたものの、対症療法、経過観察となることが多いようです。

その中で、当院では、積極的に各種療法(各種抗酸化療法など)を取り入れた診療をしています。
まだまだ、治療法が確立されておらず、いわゆる科学的論拠(エビデンス)が完全に構築されているものは少ないため、患者さんと色々とお話し、相談しながら、目的に応じて、保険診療・自由診療で、治療を提供しています。すでに、新型コロナウィルスおよび罹患後症状での診察は、700名を超えました。すべての方が改善した、とはいえませんが、他院内科・耳鼻科、後遺症外来、疲労外来、漢方外来などを受診されても、不調から脱出できなかった方の受診も多くなっています。

その中で、上咽頭擦過療法(Epipharyngeal Abrasive Therapy: EAT)の有効性データが積みあがってきています。

とある学生の方。
運動部にも所属して、元気に学校生活を送っていた。
2022年後半に新型コロナウィルスに感染。
一定期間の養生を終えて、学生生活に戻り、運動部活も再開。すると、途端にだるくて、しんどくて、動けなくなった。
いわゆる PEM(Post-exertional malaise)・クラッシュ の状態。

クラブどころか、学校にも通えなくなった。色々な医療機関を受診されるも、対症療法のみでやることはないと言われる。
罹患後数か月しても同じ状況が続いていたため、市外から当院を受診。色々な療法を組み合わせながら、その一つとして、EAT(上咽頭擦過療法)を継続的に行った。もちろん、時間経過とともに改善してきたこともあるが、徐々に回復して、学校、運動クラブ活動にも復帰できた。症状が落ち着いてからも、経過を見せてもらっているが、表情を含めて、本来の明るさを取り戻してくれているよう。治療による改善を感じて、調子がかなりよくなってからでも、経過を見せにきてくれていること自体が、一つのエビデンスともいえると感じる。

2024年4月8日の参議院 決算委員会の吉良よし子議員のご質問で、武見厚労大臣と、新型コロナウィルス罹患後症状 ならびに その症状に対する EATに関する質疑が行われました。→参議院インターネット審議中継(2024年4月8日 参議院 決算委員会の かなり後半部分 吉良よし子議員の質疑)でご覧いただけるようです。

当然 各種治療には、安全性、副反応、実際の効果検証などが必要ではありますが、EATは、比較的簡便に行え、安全で目立った副反応がない処置です。お困りの患者さんにとっては、「いま 何とかしてほしい」というのが本心です。こうした治療が、お一人でも、新型コロナウィルス罹患後症状でお困りの方に届くことを願っています。

きたにし耳鼻咽喉科