抗生物質は、細菌感染症から多くの人々を救ってきました。
細菌も、抗生物質から逃れて生き延びるために、また強くなる。さらに、その細菌を制圧しようと、新たな抗生物質が開発される…
最近は、ニューキノロン系と呼ばれる、広域の いわば色々な種類の細菌を殺菌してくれる抗生物質が内服薬として出現したことで、色々な診療科で使用されるようになっています。ただ、使いやすいということは、功罪がある、という意味にもなります。

さて、某院耳鼻科で副鼻腔炎という診断を受けた方が 長期間治療を受けているけれど 調子が悪いと来院。
これまでの治療経過をお聞きして驚かされました。このニューキノロン系抗生物質を、副鼻腔炎の治療として、約1年間にわたって処方されていました。
処方している医師も、効果がないからという理由なのか、ニューキノロン系抗生物質の種類を何度も何度も変えていました。

各種書籍・雑誌You tubeの影響もあって、
副鼻腔炎でお困りの方のご相談を 数多く診せてもらっていますが、ここまで長期間にわたって、広域抗生物質を使用しているケースは初めてでした。
決して、抗生物質による治療を否定はしませんし、実際に私も使っていますが、こうしたケースがまだまだあるのかと、驚かされました…

症状だけで判断するのでははく、鼻内診察や副鼻腔CTによる正確な診断、セルフケアのすすめ、栄養素・ビタミンミネラルの適切な摂取、日常生活の過ごし方…
いろんな改善点をととのえることで、今までの通院や 長期間の抗生物質服用は何だったのか というくらいに 不調から脱出する方がおられます。

世界レベルでも、薬剤耐性(AMR)対策がすすめられています。
厚労省もアクションプランが決定していて、
「適切な薬剤」「必要な場合に限り」「適切な量と期間」使用することを徹底する
ことを目標としています。使い方については、このことばに尽きると思います。

一人ひとりの疾患、症状、体調体質、ライフスタイルなどなどにあった、
適切な治療を行うこと、対処法をお伝えすることを肝に銘じて 治療していきたいと あらためて感じさせられました。

きたにし耳鼻咽喉科