(きた日誌) 息吹之笛(いぶきのふえ)
少しずつ 色々な活動が コロナ前に戻りつつあります。
FBにもあげましたが、東京に行った際に ワタリウム美術館 を訪れました。
ワタリウム美術館は、時期ごとに変わる現代アート展示が特徴で、スイスの建築家マリオ・ボッタの設計による私設美術館です。今回は トルコと日本をつないだ山田寅次郎展を興味深く、観覧させていただきました。
もうひとつ訪問の目的は、かねてからご縁をいただいている 日本を代表する笛奏者 雲龍さんが、こころをこめて作っておられる『息吹之笛』が この美術館で販売されているため、それも拝見しにうかがいました。
一見すると 石ころに穴があいているだけ。これで音が鳴るの?と思います。
楽器というのは、他人より練習して、他人より上手い演奏をして、他人に勝って賞をとる。そんなイメージもあるかもしれません。
この息吹之笛は、音階はなし。ただ 吹くひとのこころが音となって響くだけ。
とはいえ、なかなか鳴らない。少しずつ音は鳴るけれど、上手くいかない日もある。
その日のこころの安定・不安定が 笛に見透かされたように、響きとなって あらわれる。
いま ここ 響きがあるだけ。
雲龍さんと親交がおありだった 亡くなられた坂本龍一さんも この息吹之笛を手にされて、日々の安らぎになっていたとのこと。
今年は ちょうど 雲龍さんを自宅にお招きする機会もありました。
響き合わせ などというには程遠いものですが、
私の息吹と 雲龍さんの素晴らしい笛の音を 重ねていただき、ただただ 音階が整ったシンフォニーとは異なる、こころの響きを感じる 素晴らしい時間となりました。
決して うまい下手を問うものではなく
音程のハーモニーをあわせるでもなく
ただ 自身のこころの息を吹き込み
響きの重なりがある
それが 息吹之笛 なんだと思います。
どうしても 職業がら 医療につなげて考えてしまいますが、日々のストレスで こころも頭もぐるぐる回り続けて、「ああでもない こうでもない」「ああすればよかった こうすればよかった」「ああなったらどうしよう こうなったらどうしよう」と 疲れ果ててしまっている方が とても多くなっています。
息吹之笛。ひととき こころをしずめ ただ 息を吹き込むことだけに 意識を向けることは 瞑想にも似た 素晴らしい養生法になると感じています。