(きた日誌) First do not harm
10月はじめに受付においた球根。
入院の際は、植物は「病院に根を下ろす」と敬遠されることもありますが、外来ではご来院の方に成長を見ていただこうと、置かせてもらっていました。
はじめに 栽培法で注意を受けたことは一点だけ。
「いっさい 何もしないでください」
室内の空気、水分だけで、日にあてることもなく、ただただそこにあるだけの球根。
1か月ほどして あれよという間に芽が出て成長。
放置から2か月ほどして、ついに咲きました。サフラン。
サフランライスなどで名前をご存知の方もおられるかもしれません。花言葉は「歓喜」だそうです。
淡い紫~碧色が何とも和みを感じさせてくれ、喜びを与えてくれます。
さらに、いっさい手を加えずに、蓄えてある自らの生命力のみで、成長していく力こそが、歓喜ですね。
栽培に関する はじめの注意事項として、「いっさい 何もしないでください」といわれたと書きましたが、
よく引用されるヒポクラテスのことば First do not harm を思い出しました。
病院に行くと、どうしても「どんな薬を飲むか」「どんな治療をするか」という話になります。来られる方も、なんとか不調から脱出したい思いから、「よく効く薬がほしい!」そんな思いがつよいと思います。
もちろん、必要な診断治療はありますが、まず症状や体調を把握して、やらなくてもいい治療を避け、飲まなくてもいい薬を服用しないことも大切です。何をするか と同等に、いやそれ以上に しないか を考えないといけませんね。
先日 遠方より、100歳近い方が、拙書『図解 自力で治す 慢性副鼻腔炎 アレルギー性鼻炎』(河出書房新社)を抱えて来院されました。自ら色んなことを学んで取り入れて、実際に来院されて、話しをしようとされる姿勢は、素晴らしいと思いました。ご期待に添えたかわかりませんが、しっかりした足取りで、かくしゃくとして症状を話される姿。その姿には、お歳を超えて、力強ささえ感じさせられました。まさに あの治療、あの薬 ということではなく、いかに自身の持つ生命力を引き出し、高めるか 何をしないか が大切だと感じさせられました。