総合診療科、かかりつけ医ということばは、徐々に浸透してきているようです。
実際に、いくつもの科にかかって、いろんな病院から薬をもらっている患者さんは多く、さらに、薬で調子が悪くなった症状まで、薬で治療しようとするので、さらに薬が増える悪循環…。薬による治療は決して否定されるものではないのですが、治療を受けて、薬をもらおうとする患者さん、治療して、薬を出す側のお医者さん、いずれの側も、ほんとうに必要なのかを見極める気持ち、態度が大切です。
そういった意味では、総合診療科、かかりつけ医の考え方は大切だと思います。

日々の外来では、いろんなケースに遭遇します。

当院でも、ある症状でこられた患者さんを診察すると、目立ってお困りの症状もなく、目立ってひどく調子の悪い箇所もなかったので、

「だいじょうぶです。今日のところは、お薬はいらないと思いますよ。」

とお話しすると、患者さんは、

「先生、なんでもいいから、お薬ください!」

とおっしゃいました。不調を薬でなんとかしたい、という気持ちは理解しているつもりですが、薬ならなんでもいい!というお考えは、ちょっと…。

また別の話し。

耳の調子が悪い、ということで、いつも診てもらっておられる内科にいかれた患者さんがおられました。症状は耳でしたが、普段何でも診てもらっているという先生でしたので、受診されたようです。そこでは、もちろん、耳の中をみたり、聴力を検査したりはできません。しかし、その先生は、

「とりあえず、試しにステロイドを飲んでみましょう。」

とステロイド剤を処方されたそうです。

しかし、調子が改善する気配がないので、受診されました。やはり診察、検査をしてみると、内耳の調子が悪くなっているようでした。そんなこんなで、症状が出てから、かなり日数が経過してしまっていました。

“なんでも診られる”お医者さんは、頼りになる存在ではありますが、時に こうして専門外の病気を、しっかりした診察や検査もなく、薬だけを処方して様子を見ることで、専門の診療科に行くのが遅くなり、結果的に治療開始が遅れる、ひいては症状が治らない、というケースがあります。

このような場合、自分自身でしっかりとした診察ができない症状や病気なのであれば、やはり専門の科に紹介をすべきではないかと思いました。患者さんは信頼して診察にこられていることもわかりますし、また別の病院に行ってもらう手間も申し訳ない、ということもわかるのですが、治療開始が遅れることで、その症状が患者さんの今後の人生にまで影響するかもしれない、と考えると、どちらが正しいのか、どちらがいい選択なのか、はおのずと決まってくるように思います。

毎日の外来診察が、勉強、学びです。

きたにし耳鼻咽喉科