日々診察をしていると、患者さんは、いろんな診療科で、いろんな薬を飲んでおられことに驚かされます。
拙書『耳鼻咽喉科医だからわかる意外な病気、治せる病気』(現代書林)でもふれていますが、多くの薬をあわせて飲んでいる ポリファーマシーは大きな問題になっていますね。薬自体の副作用の確率は上がりますし、複数の薬の相互作用は、出している医師にもわからないと思います。

高血圧、糖尿病、脂質異常症などなど。

特に、コレステロールはいつも悪者にされますので、コレステロールを下げる薬を飲まれている方もとても多く見かけます。この、コレステロールを下げる薬の種類である「スタチン剤」という薬は、コレステロールの生成を抑えるだけでなく、コエンザイムQ10という物質も、作らなくなってしまいます。コエンザイムQ10は、細胞の中のミトコンドリアにあって、エネルギーを作り出すことに関係する補酵素と考えられていて、とても大切なんですね。

すべての患者さんということはありませんが、耳鼻科にこられる難聴や耳鳴り、めまいの患者さんには、コレステロールを下げる薬を飲んでおられる方も多く、コエンザイムQ10も同時に減ってしまっていることが原因になっているのでは、という意見もあります。患者さんともよく相談して、コエンザイムQ10を摂ってもらう場合もあります。

これは患者さんはもちろん、処方されている先生方もあまりご存じないようです。血圧を下げる、血糖値を下げる、コレステロール値を下げる、それ自体は大切ですが、単に血液検査の数字が下がればいい、ということではなく、その裏で人体で起こっていることを知っておく必要があります。まだまだ、学ぶことが多い毎日です。

きたにし耳鼻咽喉科