鼻やのどからは、いろんな異物が侵入してきます。
細菌やウィルスはもちろんのこと、花粉症の花粉や、ホコリ、ダニ、さらにいうと食べ物も、身体にとってはとりあえずは異物といえるでしょう。

こうして、いろんなものが入ってくる鼻やのどには、異物をキャッチしたり、そこで病気を食い止める構造があります。その一つが、扁桃というリンパ組織ですね。大人の方でしたら、「小さいころに扁桃腺を手術でとった」というご経験をお持ちの方もおられるかもしれません。口を開けると見える扁桃が口蓋扁桃、鼻のおく・つきあたりにある扁桃は咽頭扁桃、舌の付け根あたりにある扁桃は舌(根)扁桃などと呼ばれます。

(HPより)

本当は、異物などから身体を守って、細菌やウィルスと戦ってくれる扁桃ですが、それはすなわち「戦場」にもなります。扁桃が炎症をおこすと、のどが痛い、鼻の奥が痛い、熱が出る、などつらい症状起こってきます。

さらに面倒なのは、口蓋扁桃、咽頭扁桃が慢性的に炎症を繰り返していると、扁桃自体はそれほどひどい症状がないのに、そこが原因となって離れた、他の臓器(皮膚、関節、腎臓)に病気が起こってくる場合があります。
これを “病巣感染” と呼び、特にこの疾患として有名なのが、腎臓の病気 IgA腎症です。

扁桃だけでなく、歯科の炎症や副鼻腔炎なども、この病巣感染の原因になることが多いといわれています。

上咽頭は、鼻の奥、鼻とのどの境目あたりになるため、一般に内科、耳鼻科を受診しても、「問題なし」「異常なし」といわれることが多いのですが、しっかりと観察すると、さらに耳鼻科でファイバー検査などを行うと炎症が疑わる場合があります。また、鼻から綿棒などを入れてこすってみると、炎症がある場合は出血が見られます。このような場合には、上咽頭炎が考えられます。

慢性上咽頭炎は、病巣感染として、腎疾患その他の原因として重要ですが、鼻の不快感、痛みだけでなく、後鼻漏、頭痛、めまい、耳鳴り、のどの異物感、声枯れなど、すべてとはいえませんが、これまで異常なしと診断されてきた症状の原因になっている可能性がある病態です。これから、さらにその診断や治療の重要性が高まってくると思われます。

今回出席した日本口腔咽頭学会では、ご指導いただいている堀田修クリニックの堀田先生のご講演がありました。

特に、子宮頸がんワクチンの副作用でお困りの方が、上咽頭炎治療によって改善したケースを報告されました。
耳鼻科医がほとんどの学会の中でのご発表でしたので、あらためて耳鼻科医が、その重要性を認識することになったかと思います。

今後、慢性上咽頭炎がきっちりと理解され、お困りの患者さんが救われる一つの端緒になることを期待しています。

きたにし耳鼻咽喉科