耳鼻科の診察には、障害をもった患者さんも多くこられます。
(「障害」「障がい」「障碍」といった表記には、いろいろな意見があるようです。それぞれに、肯定・否定の考え方があり、使用については統一されていない現状です。)

これまでは、医療の仕事をしていながらも、自分自身のなかに、日常にはご苦労がおありだろうなあ、という、どこか他人事のような感覚があったように思います。

たまたま先日 特別支援学校の先生をしておられる山元加津子さんのことを知りました。いままで、山元加津子さんというと、ブログタイトルの『1/4の奇跡』というドキュメンタリー映画の話題を少し耳にした程度でした。

お名前を知ったことをきっかけに、数冊本も読ませていただきました。実際のこどもさん、親御さんのお話は、涙なくしては読めませんでした。

ぜひ、機会、ご興味があれば手に取っていただければよいかと思います。

ここでお考えのすべてを紹介できるわけではありませんが、マラリアにかかりにくい「鎌状赤血球」という病気のことをとりあげておられます。

伝染病につよい突然変異遺伝子をもつ人が生まれるとき、そのきょうだいには、高い確率で重い障害をもつひとがあらわれます。これは、なんとなくではなく、遺伝学的な話です。私たちは、障害ということだけに目を向けがちですが、そこには、あなたの病気を受け取った人がいる、という事実があるんですね。

本文より引用すると、
『人間がマラリアとの生存競争に勝つには、マラリアに強い遺伝子のほかに、病気や障害を持つ遺伝子も必要だった、ということです。病気や障害を「引き受ける人」がいなければ、その村は絶滅していたことになります。』

医学部時代に、マラリアや鎌状赤血球を、病気としては学びましたが、そういった視点から考えたことはありませんでした。これは、医師をめざす医学部学生の方への教育という意味でも、とても大切だと感じました。通常、医師をやっていると、おそらくマラリアや鎌状赤血球の患者さんに出会うことは、ほぼ皆無といえます。
しかし、こういった考え方は、特に医療にたずさわる方の、重要な視点として育ててほしいと思いました。

考えようによっては、遺伝的な病気だけではなく、すべての症状、病気について、いえることかもしれません。
あなたの病気を受け取ってくれた人がいる、あなたの病気を受け取ってくれたものがある、そう思うと、ひと、ものすべてに感謝して生きていこうと思えます。

きたにし耳鼻咽喉科